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■サマセット・モーム『トラベラーズ・ライブラリー』のこと

(Wiliam Somerset Maugham, Traveller's Library, 1933)

はじめに

TravellersLibrary
『 トラベラーズ・ライブラリー』。
初めてこのタイトルを見たときは、旅行好きのモームが書いた旅行記、旅行案内なのかと思った。是非読みたいと思い、古書店を探したが見つからず、紀伊国屋 で古書を海外から取り寄せた。

ページをめくってみると、その中身はアンソロジー。
洒落た短編、そして詩が集められている。

そして、(相当鈍感だったのかもしれないが)表紙に描かれた船と錨の絵を見て、やっと判った。この本は本好きが旅行に持ってゆく携帯図書館、『旅行カバン の中の図書室』なのだった。

モームは、冒頭のイントロダクションで、『ニューヨークからサンフランシスコへの汽車の旅か、不定期貨物船で大西洋を渡るような時、まあまあの厚さで一冊 だけ持って行くならこれ、という視点で選んだ』と言っている。読者たる僕は、モームの流儀にならおうと思う。
旅行の時には、この本をトランクの隅っこに押し込んで出掛けよう。長い船旅で、やがて、毎日の船上パーティーも退屈になり、同船しているおせっかいな他の 乗客とのおしゃべりで、うわべの相づちにも疲れてきたら、自分の客 室にこもってしまえばいい。
トランクの隅っこから、小さな『図書館』を取り出して、ベットに転がり、J・B・S・ホールデン教授の科学エッセイあたりのページをめくる。時々、苦め のチョコレートでもなめながら。

下記には作品のリストを紹介する。僕自身も実はまだ全部読んだわけではない。収録作品で、邦訳されているものはほとんど無いようだ。誰か翻訳してくれない かなぁ。時間を見つけて、僕自身が挑戦するか。

※序文は翻訳して、当HPに掲載している。(⇒こちら

※ほぼ読破。無人島へ持っていく1冊として最高におすすめの一冊。20110503。
 最近はやりのブック・ホテルに宿泊するよりこの本を持って旅する方が楽しいかも。

トラベラーズ・ライブラリーに収録された作品、小説家


著者名

作品名

著者略歴

作品概要
フランク・スウィナトン 
Frank Swinnerton
(1884–1982)

Nocturne

英国の小説家、評論家。編集者、劇評の仕事も残した。
Nocturne (1917), Harvest Comedy (1937), A Month in Gordon Square (1953),  Nor All Thy Tears (1972).等、30あまりの小説がある。
他に、 Gissing (1912) Stevenson (1914).等の評論がある。
WEB上の情報はあまりない。


【出典】Nocturne, 1917
【邦訳】有:『ノクターン』など。古書のみ。
【概要】ジェニーとエミーの姉妹は、互いの人生観の違いから理解し合えない。体の不自由な父親は、一人残されて…



【Note】 短編小説とは(サマセット・モーム)
短編小説の定義はその長さではない。小説は動的であるのに対して、短編小説は静的である。短編小説はその単一の雰囲気を重視する。

ジョセフ・コンラッド
Joseph Conrad
(1857-1924)

Youth

ポーランド出身の英国の小説家。
本名ヨーゼフ・テオドル・コンラート・ナウェンチュ・コジェニョフスキJozef Teodor Konrad Nalecz Korzeniowski。
モームのTellers of Tailsには、『台風』(Typhoon)が収録されている。
WEB上の情報は豊富。

【出典】Youth, 1899
【邦訳】有:『青春』など。
【概要】マルローは、若かった頃のアジアへの航海のことを語り始める。困難続きの航海で、果たして辿り着けるのか…


An Outpost of Progress


【出典】Tales of Unrest, 1898
【邦訳】有:『文明の前哨所』など。
【概要】アフリカの未開の地へと貿易会社に送り込まれたケイヤーツ、カーリアー、マコラの3人。原住民との接触はやがて…
ビアボーム
Max Beerbohm
(1872-1956)

The Happy Hypocrite

英国の小説家。他に、風刺画家、評論家、パロディー作家、劇評 家として著名。
【出典】The Happy Hypocrite, 1986
【邦訳】無さそう。
【概要】ジョニー・メアに恋したジョージ・ヘルは、恐ろしい顔を隠すため、エネアス氏の店で、聖人のマスクを手に入れる。ジョニー・メアの気持ちを掴む事 は出来た が…


Enoch Soames


【出典】Seven Men, 1920
【邦訳】有:『イーノック・ソウムズ』など。
【概要】作家を目指すソウムズは、悪魔に頼んで、100年後の図書館を見せてもらう。そこに、ソウムズの書いた本はあったのか?
アーサー・マッケン
Arthur Machen
(1863-1947)

The Inmost Light

英国の小説家、エッセイスト、ジャーナリスト、シェークスピア俳優、オ カルト主義者、翻訳家。
Blackwood, Yeats, Aleister Crowley, A.E.Waiteらと共に、Hermetic Order of the Golden Dawn のメンバー。
超自然怪奇小説で知られる。自伝も残している。

【出典】The House of Souls, 1922
【邦訳】有:『内奥の光』など。
【概要】錬金術ののめり込んだブラック博士。ブラック夫人が姿を見せなくなったのは何故なのか?
H・G・ウェルズ
Herbert George Wells
(1866-1946)

The Country of the Blind

現代のサイエンスフィクションの父と言われている。
ロンドンのNormal School of Scienceで、生物学者のトマス・ハックスレーに学んでいる。1895年、『The Time Machine』が有名。後年は、SFから離れ、社会評論を多く書いた。

【出典】Short Stories of H.G.Wells, 1895
【邦訳】有:『王様になりそこねた男』、『盲人の国』、『盲人国』など。
【概要】盲人ばかりの国に辿り着いたNunezは、視力があることを利用して権力を持とうとするが…
E・M・フォースター
Edward Morgan Forster
(1879 - 1970)

The Celestial Omnibus

英国の小説家。
多くのエッセイ、評論、自伝的スケッチを残した。長編小説は6つ。
1944年には国際ペンクラブの会長に就任。

【出典】The Celestial Omnibus and Other Stories
【邦訳】有:『天国行の乗合馬車』、『天の乗合馬車』、『天国行き馬車』など。
【概要】詩の才能を認められたトーマス・ブラウン少年。著名な作家のボンズ氏を誘って乗り合い馬車に乗り込むと…
オリヴァー・オニオンズ
Oliver Onions
(1872–1961).

IO


英国の短編小説家。
現在のRoyal Academyで芸術を専攻した。1918年にGeroge Oliverと改名しているが、筆名はOliver Onionsのままミステリー、歴史小説等を書き続けた。
1946年James Tait Black賞。
妻のBerta Ruckも、1912年に小説家としてデビュー、英米両方で人気を博した。


【出典】Widdershins
【邦訳】無さそう。
【概要】IO(アイオウ)とは、雌牛に姿を変えられた神話の中の女。詩に夢中のベッシーという娘は、キーツの詩を朗読するうちに…
ギボン
Perceval Gibbon
(1879-1926)

The Second-Class Passenger

英国の小説家、ジャーナリスト。
J・モーガン・ギボン卿の長男。ドイツの学校を卒業後、船員として、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカを広く旅し、初期の作品はその経験を元に書かれた。
1917-1918には、New York Timesの特派員としてイタリア軍に同行。

【出典】The Second-Class Passenger
【邦訳】無さそう。
【概要】ダウソン氏は、客船で乗り合わせたパターソン夫人に荷物を頼まれる。ホテルを出て客船に向かう途中、次々とトラブルに巻き込まれるダウソン氏。果 たして 出航の時間に間に合うのか?
ニール・リヨン
Albert Michael Neil Lyons
(1880-1940)

The Ginger-Nut


英国の小説家、詩人、脚本家、編集者。
WEB上の情報はほとんどない。

【出典】The Ginger-Nut
【邦訳】無さそう。
【概要】ジョージは刑期を終えて出所してくる。それを迎える家族は…
C・S・エバンス
Charles Seddon Evans (1883-1944)

Bringing a New Boy

East London Collegeを卒業、教員として働いた後、1909年に出版業界へ転身、 Edward Arnoldの元で教育系の編集者として働く。 1913年、Heinemann社に移り1932年から同社のマネージャとなる。 『シンデレラ』の続編とも言える『眠れる森の美女』を、グリム兄弟等の残酷な描写を省略した新しいストーリーにて出版し、 人気を博した。
【出典】Nash and Some Others
【邦訳】無さそう。
【概要】母親は子供を新しい学校へ入学させようと連れて行くのだが…
D・H・ロレンス
David Hervert Lawrence
(1885-1930)

The Prussian Officer

20世紀英文学の代表的作家の一人。
中短編、詩、評論、随筆等も多い。
多くの年月を国外に過ごした。
WEB上の情報は豊富。

【出典】記載なし
【邦訳】有:『プロシヤ将校』など。
【概要】恋人に手紙を書こうとする兵士。将校は兵士を呼び出して、それを邪魔しようとするのだが…
オルダス・ハックスレー
Aldous Leonard Huxley
(1894-1963)
The Tillotson Banquet

英国の小説家。風刺小説、評論を得意とした。祖父は生物学者、父は文 人、兄も生物学者、評論家として活躍。
'38年から眼の治療のため、カリフォルニアに住んだ。ケネディ大統領が暗殺された日に死んだ。
WEB上の情報は豊富。

【出典】Mortal Coils, 1922
【邦訳】無さそう。
【概要】スポードは、画家のウォルター・チロトソンを再発見し、彼を夜会に招く事にするのだが…



【Note】 小 説家について(サマセット・モーム)
小説を読むのと同じぐらいに、小説や小説家についての本も面白い。作家の人間性に対する興味を感じる。

エドモンド・ゴス
Sir Edmund Gosse (1849-1928)

Swinburne

主に評論家、エッセイストとして活躍。詩集も残している。
父は動物学者。

【出典】Swinburne
【邦訳】無さそう。
【概要】19世紀後半に活躍した詩人スウィンバーンの人生、作品に関する評論。


Robert Louis Stevenson


【出典】Recollections of Stevenson
【邦訳】無さそう。
【概要】友人としての立場から、スティーブンスンを語った評論。
マックス・ビアボーム
Max Beerbohm

No. 2 The Pines

前出

【出典】And Even Now
【邦訳】無さそう。
【概要】上記のエドモンド・ゴスのスウィンバーン論を受けて、ビアボームが書いたスウィンバーン論。晩年、ワッツ=ダントンに世話を受けていた頃のスウィ ンバーン との交流を描く。
ハックスレー
Aldous Leonard Huxley
Wordsworth in the Tropics

前出

【出典】Do What You Will, 1929
【邦訳】無さそう。
【概要】自然の厳しさと美しさについて語り、ワーズワースが自然の厳しさを取り上げていないとして批判する。
ジョン・ゴールズワージー
John Galsworthy
(1867-1933)

Reminiscences of Conrad

1897年、短編小説家としてデビューしたが売れず、1906年劇作家 として有名になった。
第一次大戦中は、負傷兵のために病院で働くとともに、イギリス政府のために戦争広告の作品を書いた。
1932年、ノーベル文学賞。

【出典】Reminiscences of Conrad, 1924
【邦訳】無さそう。
【概要】友人としての立場から、コンラッドとの交流を回想する。
デスモンド・マッカーシー
Desmond MacCarthy
(1877-1952)

A Hermit's Day

学生の時に、G.E.Mooreの主催する秘密結社に参加(後にブルー ムズベリーにつながる)。1910年、R・フライ(画家、批評家)の薦めでポスト印象派展覧会で役員をつとめ、ヨーロッパ各地を回り、当時まだ評価されて いなかった、ゴッホ、セザンヌ、マティスの作品を集めた。第一次大戦には、フランスで救護隊の運転手として従軍。1920-1927には、New Statesman にて、文芸編集者。1951年、爵位。

※ブルームズベリー・グループ
1906〜1930頃に活躍した芸術家、知識人の集まり。バージニア・ウルフ(作家)、E・M・フォースター(作家)、ジョン・メナード・ケインズ(経済 学者)、リットン・ストレーチー(批評家)、ロジャー・フライ(批評家)、クライブ・ベル(批評家)、ダンカン・グランド(画家)、ヴァネッサ・ベル(画 家)、レナード・ウルフ(作家)。
バードランド・ラッセル(哲学者)、G・E・ムーア(哲学者)、G・L・ディキンソン(政治学者)らの影響下に発生。

【出典】Remnants
【邦訳】無さそう。
【概要】ヴォルテールの話だろうか。私には文学史の知識が不足で、時代、人物ともはっきり読み取れず不明。
ヴァージニア・ウルフ
Virginia (Adeline) Woolf
(1882-1941)

Dr. Burney's Evening Party

父レズリー・スティーブンは文芸評論家、哲学者。兄の関係したブルーム ズベリー・グループにおいて、レナード・ウルフと知り合う(後に結婚)。1915年に『The  Voyage Out』で文壇に。文芸、社会評論でも活躍。1941年に自殺。

【出典】The Second Common Reader, 1932
【邦訳】無さそう。
【概要】ジョンソン博士が出席したパーティーの話のようだが…
これって本当の話なの?
H・W・ギャロッド
Heathcote William Garrod
(1878-1960)

How to Know a Good Book from a Bad

英国の作家、政治家。
WEB上の検索では、
"Keats", "Oxford Book of Latin Verse", "Q. Horati Flacci Opera", "Wordsworth Lectures & Essays"等の本の作者として見受けられるが、略歴は不明。

翻訳してみた。⇒それはこちら。

【出典】The Profession of Poetry and other Lectures
【邦訳】無さそう。
【概要】良い本を選ぶための指針を語った文学評論。その結論は…



【Note】 詩 について(サマセット・モーム)
若い頃、詩についての勉強をしており、仕事に役立つことがある。散文に疲れたときに詩を読むことがある。地下鉄の喧騒の中で詩を読んでいる女性を見かけた ことがあるが、私ならもっと贅沢な読み方をしたい。詩人は韻文を書く。読者が詩を作る。

ロイ・キャンベル
Roy Campbell
(1902-1957)

The Making of a Poet

The Serf

Horses on Camargue

On Some South African Novelists

南アフリカの詩人。
イギリスで早くから評価されたが、ブルームズベリーを批判し、文壇で孤立。その後は、充分に評価されることはなかった。
Lorcaや、St John of th Cross等のスペインの詩の英訳でも知られる。T.S.Eliot, Edith Sitwell, Dylan Thomas らによって再評価された。

【出典】Adamastor, Poems by Roy Campbell, 1931
ジークフリード・サスーン
Siegfried Sassoon
 (1886 - 1967)


"Blighters"

Base Details

Idyll

Vision

Everyone Sang

英国の詩人、作家。
ケンブリッジ卒業後、田舎に暮らしながら詩を書き、自費で出版していた。
第一次大戦従軍時の命知らずの行動で、”マッド・ジャック”という愛称で呼ばれ、勲章も受けている。
1917年、バードランド・ラッセルと知り合い、反戦詩"A Soldier's Declaration"を書き、軍部から制裁を受けている。
晩年まで詩、散文を書き続けた。
1957年に、女王から勲章を受けた。

【出典】Counter Attack and Other Poems,  Picture Show,  Old Huntsman and Other Poems,  Selected Poems,   Satirical Poems
ヒレア・べロック
Hilaire Belloc
(1870-1953)

Tarantella

Lines to a Don

The Statue

On a Dead Hostess

On a Great Election

Partly from the Greek

フランスに生まれたが、戦争を避けて一家はイギリスへ。
1896年に初めて小さな詩集を出版してから以後、幅広い分野に渡る膨大な量の作品を書いた。全集は150巻に及ぶ。A.P.Herbertは、べロック の事を、『図書館を書いた男』と評した。

【出典】Sonnets & Verse
フランセス・コーンフォード
Frances Cornford
(1886-1960)

Autumn Evening

To a Lady Seen from th Train

英国の女流詩人。
チャールズ・ダーウィンの孫娘。ワーズワースの親戚にもあたる。古代哲学者のFrancis Cornfordと結婚。作品には8冊の詩集と2冊の翻訳がある。
1959年に女王から勲章を受けた。

【出典】Selections from Modern Poets
W・J・ターナー
Walter James Turner
(1871 - 1962)

In the Caves of Auvergne

オーストラリア、メルボルンに生まれたが、作家を志してロンドンへ。戯 曲、小説、詩、作曲、劇評など。

【出典】In the Caves of Auvergne
ラルフ・ホジソン
Ralph Hodgson
(1871-1962)

The Bell

The Mystery

英国の詩人。
ロンドンでジャーナリストや雑誌編集者として働きながら、詩を書いた。

【出典】Poems, 1917
ウイリアム・H・デイビス
William Henry Davies
(1871-1940)

Leisure

英国の詩人。
若くして学校を離れ、英国、米国で大道商人、乞食として生活した。1905年、自費出版した"The Soul's Destroyer"がG. B. Shawに認められ、文壇へ。
貧困の苦しみをテーマに詩作を続けた。

【出典】Leisure
ジョン・メースフィールド
John Masefield
(1878-1967)

Sea-Fever

英国の詩人。
商船の船乗りを志し、13才で訓練船に乗り込んだが、喜望峰を経てチリに向かう途中で病気になり、イギリスへ戻る。以後、アメリカへ渡り、カーペット工 場、ホテルの調理場などで働いた。
1897年にイギリスに戻り、新聞社で働いた後、1902年に詩集"Salt-Water Ballads"で文壇へ。海をテーマにした作品を多く書いた。

【出典】Collected Poems
ジョセフ・プランケット
Joseph Mary Plunkett
(1887-1916)

I See His Blood Upon The Rose

アイルランドの詩人。
アイルランド独立の市民活動に大きく関わった。イースター蜂起のリーダーの一人。死刑執行の1時間前、キルメイナム刑務所で、Grace Giffordと獄中結婚した。

【出典】The Complete Poetical Works of Joseph Mary Plunkett
サシュヴラル・シットウェル
Sir Sacheverell Sitwell
(1897-1988)

The Rio Grande

英国の詩人。
芸術や建築に関する著作で知られている。1919年に兄Osbertと、現代フランス芸術展を主催し、ピカソ、モディリアニらをイギリスに紹介した。



【出典】Thirteenth Caesar



アーノル ド・ベネットについて(サマセット・モーム)
サマセット・モームがベネットとの交流を回想する。

アーノルド・ベネット
Arnold Bennett
(1867-1931)

The Old Wives' Tale

英国の小説家、劇作家、エッセイスト。
雑誌編集者であったが、1900年以降は創作に専念。劇評を中心に書いた。
モームは、この作品を選ぶにあたり、"On Arnold Bennett"というタイトルで、評論を前置きしている。

【出典】The Old Wives' Tale
【邦訳】有:『二人の女の物語』など。古書のみ。
【概要】ソフィア、コンスタンスという姉妹の人生を通して、人生とは何か?と問う。

※すこし長い、そして微妙に面白くないような…。モームは意図してこの作品を選んだのだろう。読書の面白さについて、 改めて考えさせられてしまう。



【Note】 詩 について(サマセット・モーム)
詩の美しさは時代と共に変化する。ここに紹介する詩は、未来も美しいままであり続けるだろうか。

ロバート・ブリッジ
Robert Bridges
(1844-1930)

A Passer-By

On a Dead Child

Nightingales

英国の詩人。
1882年までは外科医として成功し、薬学の研究など行った。その後、詩作をはじめた。
1913年には、Poet Laureate賞。
【出典】The Poetical Works of Robert Bridges
アリス・メイネル
Alice Meynell
(1847–1922)

Renouncement

英国の女流詩人、エッセイスト。
夫Wilfrid Meynellと共に、Francis Thompsonを経済的に援助した。

【出典】The Poems of Alice Meynell
フランシス・トンプソン
Francis Thompson
(1859-1907)


The Hound of Heaven

The Kingdom of God (In No Strange Land)

英国の詩人。
医学を学んだがアヘン中毒から健康を害し、生活に苦しんだ。原稿を、Wilfrid Meynellに認められて1893年"Poems"を刊行し、文壇へ。

【出典】The Selected Poems of Francis Thompson
ルパート・ブルック
Rupert Brooke
(1887 -1915)

The Soldier

The Hill

The Old Vicarage, Grantchester

Heaven

英国の詩人。
イェイツは彼を"イギリスで最もハンサムな青年"と書いた。ジークフリード・サスーン、ロバート・グレイブス、ウィルフレッド・オーエンらと共に戦争詩人 と評される。
従軍し、ガリポリ半島へ向かう途中、血毒症で死亡。

【出典】Collected Poems of Rupert Brooke, 1915
ウォルター・デ・ラ・メア
Walter de la Mare
(1873-1956)

An Epitaph

The Three Strangers

The Little Salamander

Arabia

The Listeners

英国の詩人。小説、詩、批評など。
アングロ・アメリカン製油会社に勤めていたが、政府年金の提供を受け、創作に専念するようになった。
ポリニャック賞をはじめ多くの文学賞を受賞。

【出典】Collected Poems, 1920
ジェームズ・エルロイ・フレッカー
James Elroy Flecker
(1884-1915)

The Golden Journey to Samarkand: Prologue

War Song of th Saracens

The Old Ships

Brumana

Hyali

英国の詩人、小説家、劇作家。
ルパート・ブルックと親交があった。


【出典】The Collected Poems of James Elroy Flecker
ウィリアム・バトラー・イェイツ
William Butler Yeats
(1865-1939)

Down by the Salley Gardens

The Lake Isle of Innisfree

To a Friend Whose Work Has  Come To Nothing

That the Night Come

アイルランドの詩人。
アイルランド文芸復興の先導者。1923年ノーベル文学賞。

【出典】Early Poems and Stories,  Later Poems



【Note】 エッ セイについて(サマセット・モーム)
以下には、先に挙げたエッセイとは趣きの異なるものを並べた。アルダス・ハクスリーは今日の優れた作家だと思う。

リットン・ストレーチー
Lytton Strachey
(1880-1932)


Florence Nightngale

英国の批評家、伝記作家。
ブルームズベリー・グループの一人。


【出典】Eminent Victorians
【邦訳】有:『ナイティンゲール伝』、『ヴィクトリア朝偉人伝』など。
【概要】精力的な政治活動、統計数学的手法の導入、神学への傾倒など、児童書の伝記にはないナイチンゲールの素顔。ストレーチーはナイチンゲールを、白鳥 ではなく ワシにたとえている。
ジュリアン・ハクスリー
Julian Sorell Huxley
(1887-1975)


Religion and Science, Old Wine in New Bottle

イギリスの生物学者。
ロンドン大学教授、王立研究所所長、ユネスコの初代事務局長などを歴任。

翻訳してみた。⇒それはこちら。

【出典】Essays of Biologist, 1923
【邦訳】無さそう。
【概要】左記リンクを参照。
J・B・S・ホールデン
John Burdon Sanderson Haldane
(1892-1964)

The Last Judgment

イギリスの生物学者。
遺伝学の研究で有名。R. Fisher , S. Wright らと、数学的な手法を導入し集団遺伝学を創始、遺伝学に革命をもたらした。『クローン』という単語を鋳造した人物。

翻訳してみた。⇒それはこちら。

※J・B・S・ホールデン教授に関する書籍のうち、邦訳で読めるものには以下のものがある。どちらも古書でしか手に入らない。

『人間とはなにか』
(原題:"What is Life?"、J.B.S Haldane、1947、訳:八杉竜一氏、岩波新書)
教授の歯に衣を着せぬ語りが痛快。

『J.B.S.ホールデン この野人科学者の生と死』
(原題:"The Life and Work of J.B.S Haldane"、Ronald Clark、1968、訳:鎮目恭夫氏、平凡社)
僕がこれまでに読んだ伝記の中で最も面白いものの一つ。
【出典】The Last Judgment, 1927
【邦訳】無さそう。
【概要】人類が存在し続けるために、個人主義を超えて協力しなければならないと説く。SF的な未来の描写。
バートランド・ラッセル
Bertrand Arthur William Russell
(1872-1970)

On The Value of Scepticism

イギリスの数学者、哲学者、論理学者。
20世紀に最も影響を与えた哲学者。原水爆、アメリカのベトナム戦争の批判など。1918年には投獄されている。1950年ノーベル文学賞。

【出典】Sceptical Essays, 1928
【邦訳】無さそう。
【概要】人間の認識を、合理的な面と非合理的な面の2つに分析する。非合理的な面を正しく批判することで本質的な道徳を形成すべきと説く。


Eastern and Western Ideals of Happiness


【出典】Sceptical Essays, 1928
【邦訳】無さそう。
【概要】中国の儒教と西欧のキリスト教を対比し、互いの利点欠点を比較する。儒教文化の良い点に学ぶべきと説く。


A Free Man's Worship


【出典】Mysticism and Logic, 1928
【邦訳】無さそう。
【概要】自然に対する無力さと人間知性の強さの両方を知り、それを仲間と共有することで、冷徹な宇宙において自由を獲得する、これが合理的な信仰だと説 く。
オルダス・ハックスリー

A Night at Pietramala

前出。

【出典】Along the Road, 1925
【邦訳】無さそう。
【概要】アペニン山脈の山荘、冷たいベッドの中で、科学者ファラデーに思いをはせる。『生まれ変わるなら私はファラデーのように素敵な科学者になりた い。』




【Note】 短 編小説について(サマセット・モーム)
私は先の章で、モーパッサンに代表される古いスタイルの短編を紹介した。ロシアのチェーホフは新しい短編のスタイルを開拓した。この新しいスタイルは、読 者の想像力が求められる。ハロルド・ニコルソンの短編はまた新しいスタイルだと感じる。

ノラ・ホルト
Norah Hoult
(1898-1984)

Mrs. Jhonson

アイルランドの小説家。
幼少はイギリスで過ごしたが、両親の死後アイルランドの母方の親類に育てられた。新聞社で働きながら、短編を書き始めた。

【出典】Poor Women, 1929
【邦訳】無さそう。
【概要】ジョンソン夫人は、一人で、夜の街を彷徨する、その理由は。。。
オズバート・シットウェル
Osbert Sitwell
(1892-1969)

The Machine Breaks Down

英国の小説家。
詩、小説、回顧録など。前出サシュヴラル・シットウェルの兄弟。晩年は准男爵として皇室との交友があった。

【出典】Triple Fugue
【邦訳】無さそう。
【概要】社交に秀でた紳士の老い果てた姿は。。。
マイケル・アーレン
Michael Arlen
(1895-1956)

The Man With the Broken Nose

英国の小説家。
アメリカ人の両親のもと、ブルガリアに生まれた。誕生名はDikran Kuyumjian。子供のころにイギリスに帰化。小説、戯曲で知られる。息子のMichael J. Arlenが伝記を残している。

【出典】These Charming People, 1924
【邦訳】無さそう。
【概要】アルメニア人を名乗る男の鼻が、へし曲がっているのは何故なのか。。。
マーチン・アームストロング
Martin Armstrong
(1882-1974)

Biography

英国の詩人、小説家。
詩人として登場したが、1920年代以降は、主に小説を書いた。
1944年から13年間、The Listener誌でウイークリーコラムを担当した。

【出典】The Puppet Show
【邦訳】無さそう。
【概要】作家ジョン・チャンピオンの死後、書かれた伝記の内容は。。。


The Poet and the Mandrill


【出典】The Puppet Show
【邦訳】無さそう。
【概要】
詩人は一匹のマンドリルを見て。。。
ウイリアム・ゲルハルディ
William Alexander Gerhardie
(1895-1977)

The Big Drum

英国の小説家、劇作家。
(Gerhardieは、eを洒落で付けていた。)
1920年代に人気を博した。晩年まで小説、戯曲を書き続けたが、第2次大戦後は忘れられ、貧困のうちに亡くなった。

【出典】Pretty Creatures, 1927
【邦訳】無さそう。
【概要】オットーは楽団でドラムを担当している。それを見つめるフィアンセは。。。
キャサリン・マンスフィールド
Katherine Mansfield
(1888-1923)

Pictures

英国の小説家。
ニュージーランドに生まれたが、イギリスへ渡り、小説家に。 評論家ジョン・ミドルトン・マレーと結婚。
 英文学史上、特異な作家。
【出典】Bliss and Other Stories
【邦訳】無さそう。
【概要】エイダ・モスは歌手を夢見ていたのだが。。。


Psychology


【出典】Bliss and Other Stories
【邦訳】無さそう。
【概要】男と女は、部屋で二人きりになるのだが。。。


Miss Brill


【出典】The Garden Party, 1922
【邦訳】有:『ブリル女史』など。
【概要】ブリルは楽団の演奏に幸せな気持ちになっていた。しかし、隣に座った少年と少女の戯れから。。。
ハロルド・ニコルソン
Harold Nicolson
(1886ー1968)

The Marquis de Chaumont

英国の伝記作家、歴史家、外交官。
ペルシャ、テヘランに生まれた。外交官の父について、トルコ、スペイン、ロシアで幼少を過ごした。
大学卒業後は、自身も外交官に。オズワルト・モーズリーの党に加わっていたが、モーズリーがファシスト党を作る際に、モーズリーの支持を止めた。
妻のVita Sackville-Westも、作家。
※some peopleは、全部で9人の伝記からなる。大変面白い。邦訳は無いが、是非一読を薦めたい。

【出典】Some People
【邦訳】無さそう。
【概要】プルースト、コクトーの友人の、ド・ショーモンという詩人は。。。


Arketall


【出典】Some People
【邦訳】無さそう。
【概要】カーゾン卿の召使のアーカテイルは、行く先々で事件を巻き起こす。

デイヴィッド・ガーネット
David Garnett
(1892-1981)

Lady Into Fox

英国の小説家。
祖父リチャードは作家、父Edwardも作家、母Consstanceは翻訳家で知られる。
ブルームズベリーと親交があった。
イラストレーターのRachel Alice Marshallと結婚したが死別。ブルームズベリーのClive Bell, Vanessa Bellの娘、Angelica Bellと再婚。Vanessaと、再婚の夫Clive Duncanの反感を買っている。
書店を経営し、小説を書いた。

【出典】Lady Into Fox, 1923
【邦訳】有:『狐になった夫人』など。
【概要】テブリック氏の奥さんは、ある日突然、キツネになってしまう。。。
サキ
Saki
(Hector Hugh Munro)
(1870-1916)
Louise

英国の作家。
本名Hector Hugh Munro。ビルマで生まれた。ビルマの警察に入ったが、ジャーナリストに転向、モーニングポストの海外通信社、Westminster Gazetteで風刺文を書いていた。1908年にイギリスへ出て、文壇へ。

【出典】The Short Stories of Saiki, 1930
【邦訳】有:『ルイズ』など。
【概要】幼いルイーズを、どこに忘れてきたのか。。。


Tobermory


【出典】The Short Stories of Saiki, 1930
【邦訳】有:『トバモリー』など。
【概要】天才猫のトバモリーは何処へ。。。



Esme


【出典】The Short Stories of Saiki, 1930
【邦訳】有:『エズミ』など。
【概要】エズメと名をつけた動物は。。。



【Note】 探偵小説について(サマセット・モーム)
私自身も、探偵小説を書いてみようと思った事がある。私自身としては、探偵小説の中では、殺人事件を扱ったものが好みだ。

E・C・ベントレー
Edmund Clerihew Bentley
(1875-1956)

Trent's Last Case

英国のジャーナリスト、推理小説作家。
Daily News紙を経て、Daily Telegraph紙に移り、20年ほど社説を担当。
1934年に引退し、以後、著作に専念した。

【出典】Trent's Last Case, 1913
【邦訳】有:『トレント最後の事件』。
【概要】言わずもがな。もはや古典となった推理小説。

作者の略歴は、主にWebで検索してまとめた。
間違いがあれば、ご連絡を。


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